さいどうにっき

趣味や日常などを不定期で書いていきます

箱買いしたドクペが2週間経たずに消えた

序文

好きなものを好きな時に食べたい。 初めて望んだのはいつだっただろうか。 確か当時はおじいちゃんの家で食べられるパイナップルの缶詰が好きで、いくらでも食べたいと望んでいた…ような気がする。

箱買いというものを知ったのは小学生の時だった。 よく遊んでくれた親戚の兄ちゃんが、おまけつきのお菓子を一箱買っていたのを覚えている。 確かおまけはカードだったような…当時小学生の性癖を歪めまくったという森羅万象チョコだっただろうか。 ともかく、「箱買いができる」ということはジュース一本買うのも悩む小学生の僕にとって金持ちの象徴だったのだ。

バブル

Dr.Pepperを初めて飲んだのはいつだったか、もはや記憶にない。 いずれにせよ、高専に入って2,3年もする頃には立派なドクペ好きだったのは間違いないだろう。 風呂上がりには銀白色の硬貨を2枚持って寮の自販機に赴き、2缶買って友人の部屋に持ち込むのである。 いやマジ毎日押しかけてすまんかった。

4年生になる頃には卒研室売店に入り浸るようになった。 食堂前の売店では100円で350ml缶しか買えないのだが、こちらは100円で500mlのロング缶が売っているのだ。 コスパにしておよそ1.4倍となれば、Amazonでもそうそうお目にかかれるものではない。 これを超える倍率となると、身近なところではセール時のPortal (驚異のコスパ10倍) くらいだろう。古いが良ゲーだからみんな買ってくれ。

話はさておき。

5年生になると同級生が卒研室売店を次ぐことになる。 僕は変わらず桜の硬貨と500mlの生命を交換する日々だった…のだが、ここで大きな転換点が訪れた。 そう、箱買いを始めたのである。 僕か、卒研室売店をやっていた彼女か、どちらが言い出したかは覚えがない。 だがいずれにせよ、そうなったのは「お得意様」となった証拠なのであろう。 箱であればおよそ1800円、実費のみで僕に卸してくれることになった。 一箱2ダース入りだから、2400-1800=600円の得。 ここに来て1.25倍のコスパブーストとなれば、断る理由などどこにもない。 24本を飲みきれるか?考える間もない。1箱あれば1箱飲むのが自分という人間なのだから。

かくして僕は、当初と比較しておよそ1.8倍のコスパドクペを飲むことに成功したのである。

完成

それまでドクペの置き場は卒研室売店の冷蔵庫だった。 いや、買うまで僕のものではないから、他の人のものになるドクペかもしれないけど。

それが場所を変えて「僕専用のドクペ」置き場となる。 1フロア下、僕が所属する卒研室の冷蔵庫だ。 卒研室の入り口にはドクペの箱が置いてあり、冷蔵庫には冷えたストックが常備されている。 箱の中の常温保存ストックが切れそうになると、また仕入れをお願いして24本の追加が行われた。 僕個人で飲む分には決して尽きることがないストックの完成だ。 僕のドクペライフはこれをもって完成したのだ、と当時を振り返って思う。

ちなみにしばらくしてから「やっぱ実費だけだとキツいから2000円に上げていい?」と言われたのでコスパが下がった。 いやもちろん、2000円でも十分安い。それでも400円分の得だし。

衰退

高専を卒業してからというもの、僕はドクペとあまり縁のない生活を送っていた。 かつての消費量は見る影もなく、月に1本も飲めばいい方である。 「あ、ドクペなくても生きていけるんだ」と気付いたのはこの頃だった。 一度箱買いして消費したこともあったが、そんなに追加ストックがほしいとも思わなかった。 執着にも等しかったドクペ欲は、就職による目まぐるしさによってすっかり消えてしまったようだった。

少し話は逸れるが、弊社はオフィスの自販機がタダで利用できる。 (リンクはちゃんとリクルートサイトに飛ばしてあるから安心して開いてほしい、あと受ける前に一声かけてくれると嬉しい) 早い話がドリンク飲み放題だ。麦茶を飲みオレンジジュースを飲みウェルチを飲みカルピスを飲み、十分な刺激が得られていたのである。

思い返してみると、学生のときはタダで飲めるものが水しかなかった。 足りない刺激をドクペで埋めていたと考えると、満たされた状態の今はそんなに欲さないのもうなずける。 ああ、まさしく僕は満たされたのだ。

再起

新型コロナウイルスの流行に伴いによってリモートワークが始まったのは2月末である。 僕を満たしていたフリードリンクともしばしのお別れである。 当然ながらリモートの備えなんてしていないわけで、まともに飲めるのは水しかない。 味のついた水に飢える生活の始まりだ。

3ヶ月耐えた。 時折コンビニに売っている三ツ矢サイダーや果汁ジュースを買ってみるものの、どうしても1日から3日ほどでなくなってしまう。 満たされない…とても満たされない…業を煮やした僕は、あの24本に再び手を伸ばした。Amazonありがとう。 箱を開けたら2本を冷蔵庫へ。 冷えた頃に取り出して蓋をひねり、数ヶ月ぶりの味を口に流し込む。 そうだ、これだ。これを僕は待っていた。 今こそ、あの無限ストックが僕を支える時期なのだ。 確信するには遅すぎたが、これから続くリモートワーク生活を思えばまだまだ多くの時間があった。

そしてドクペによって満ち足りた2週間弱が過ぎる。 今日も1本空けて…おかしい。 冷蔵庫にストックがない。箱の中にも。 ……ああ、僕は注文をし忘れたのだ。 ここは卒研室売店ではないし、もちろん卸してくれる人もいない。 自分で買うしか道はないのだ。 無限に感じたストックは当然有限だし、それを補充しなければいつかは尽きてしまう。 学生の時はストックが切れそうになったら再補充していたではないか。 どうして忘れてしまったのだろう…いや、そんなことはどうでもいい。 まず向き合うべき現実は、この深い悲しみを抱えながら水道水を啜る生活に戻っていくしかない、ということなのだから。

おわりに

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